従業員の給与を下げるための対策とは??
2021/07/08
皆さん、お世話になります<(_ _)>
今回も顧問先様からよく問い合わせをいただく事例です<(_ _)>
問い合わせ:従業員の給与を下げたいんだけど、無理かな??
回答:残念ながら原則は、不可です!しかし、これは裁判になったらということです。
裁判にならなければ、本人の同意を取得しておいたら実施可能です!
しかし、裁判になった場合も今からご紹介する方法により認められるケースがあります!
方法①:従業員ごとに個別の同意を得る
根拠法令:労働契約法第9条により、使用者は労働者と合意することなく、
就業規則を変更することにより労働条件を不利益変更することができないと規定されています。
同意を得たらなんでもいいのか??いえ!違います!
1:必ず書面で同意取得
2:同意書冒頭で不利益変更の内容とその必要性を詳細に記載
3:従業員と1対1で面談を十分に行うこと
4:面談時の質問等は記録に残すこと
※3,4については、録音や録画などにより、労働者が会社からの圧迫なく自由意思で同意したことが証明できるように証拠を整えておきましょう!
具体判決:平成28年2月19日最高裁判決で賃金や退職金の減額に対する不利益変更を書面で取得していたのに、認められなかった判決など判例上、厳格な
判断となりますので、客観性のある証拠を事業主さんは整えましょう!
方法②:就業規則の変更で変更する
根拠法令:労働契約法第10条に定められている、変更に合理性があること、変更内容が周知されている事を満たせ!とありますので注意!
また、合理性の判断基準はかなり厳格なものですが、不利益変更にもいろいろあります!
合理性判断が厳しくなるものとして以下があげられます!
MAX厳しい:賃金、退職金の減額
中程度厳しい:労働時間を延ばす、休日を減らす、昇給を停止、定年制を導入
まあまあ緩やか:福利厚生制度や休職規定の不利益変更
ここで賃金の減額変更が認められる条件をお伝えします!
・赤字が数期連続し、経営危機にあるなどのケースに限り認められる
・労使間で決算書類などを提示して十分な話し合い(記録が必要です)
具体判決:シオン学園事件(東京高等裁判所平成26年2月26日判決)
自動車教習所運営会社が就業規則の不利益変更により、平均8.1%の賃金減額を行い、合憲とされました。
この判例のポイントは以下の通りです。
・多額の営業損失が計上されていた
・減額について、3年間で20回以上団交をしていたこと
・団交において経営資料が提示されて十分な説明が行われていたこと
方法③:労働組合との間で労働協約を締結すること
これは、労働組合がある会社の話なので、省略します<(_ _)>
方法④:人事考課制度により、等級引き下げ
これには、7つのポイントがあります
・就業規則で人事評価に基づき賃金の減額が規定されている事
・人事評価の結果、決まる等級と給与の関係性があらかじめ定められていて周知されている事
・等級引き下げの基準が定められているか?(連続最低基準評価の場合は1等級降格など)
・評価前に人事評価の項目を設定し、従業員と共有しているか?(目標設定面談が重要になりますし、記録を残しましょう!)
・2次以上の評価制度であること
・本人に評価をフィードバックしているか?(評価面談が重要になりますし、記録を残しましょう!)
・評価結果に対する異議申し立ての制度が構築されている事(就業規則等に記載しましょう!)
方法⑤:役職給を取り払う方法
こちらは、会社が役職者たるものを選ぶ権利があることを裁判所でも広く認めていますので、合法判断がかなり多いです。
ただし、違法となるケースもあります!
・退職に追い込みたいがための降格であること
・有給取得など正当な権利行使を理由に降格させること
・2段階以上の降格をすること
・妊娠、出産、育児などを理由に降格させること
以上、方法は様々ですが、どれについても、客観的証拠を企業は準備する必要があるので注意しましょう!
皆さん、降格処分をする際は、一度、やる前にご相談ください<(_ _)>